耀子の体はそう好きではなかったが、 裸になったのを見せられると、勃起は健やかだった。
わたしの男根が
「耀子です。あたし、耀子よ」
つぶやくので、 まだ体を流しに赴いていない奥のバスルームが唱和し、
「耀子です。あたし、耀子よ」
安手のテレビCMの台詞かなにかのように、ちょっと歌うように、 言った。
夜のホテルの高層階の部屋なので、 近くの他のビルの窓々のあかりが美しい。
テレビのわきに置かれてあるグラスが、
「耀子はあたしのほうかもしれないよ」
言いながら、すこしカチンと音を立てた。
その音を契機に、というわけでもないと思うが、 耀子の裸体はたちまち2ミリほどの極細のコードのように豹変した 。宙にスクリューのように舞い上がって立ち上がったと見る間に、 わたしの男根の先端から入り込んできて、交合となった。
男根とはつねに女体である。そして、 すべての女がそうだとまでは言わないが、耀子のような女は、 つねに真の男根である。
今夜、耀子はわたしの脳髄まで届いていきそうだ、と感じる。
「耀子です。あたし、耀子よ」
と、また、バスルームが言っている。
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