雪の近づく気配で
めくれあがる
古代語の辞書のページ
茶葉をひとつまみ
指で運ぶあいだ
香りは遅れながら移る
すこし重いのに
しっかりした革の手帖を
携えて出かける
列車の小旅の後は
小舟で川も渡り
麺しかない鄙びた食堂
携帯電話など
繋がらない葦や葭の地帯
目をつぶればヨシキリ
構成しない視点を
もっと手に入れるために
気を故意に散らす
オレンジ色の表紙の
遺言書を抱いて
探さない目を開き続ける
限界を露呈する前に
去ってしまう主義でね
王たちをいつも干からびさせる
めくれあがった
古代語の辞書のページに
雪の近づく気配
茶葉をひとつまみ
香りをゆるり移しながら
指で運ぶ
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