これといって
なにも
記すべきことなどないようなときに
それでも
なにか
言葉を記してみたくなるのは
どうしてだろう?
そんなとき
深い山奥の森の遠景や
林の静寂などから
叙してみたくなるのは
どうしてだろう?
それらの森や
林を
心のなかに見ながら
無人の
大きな世界を聴いているようなのは
どうしてだろう?
聴いている
この自分さえ
人でなど
なくなっているようなのは
どうしてだろう?
これといって
なにも
記すべきことなどないようなときに
言葉さえ
透明に澄み切るようなのは
どうしてだろう?
このようで
よく
他のようでも
よく
あらゆるものに
時に
人びとに
それらのいまの
ありようを
そのまま
いまのまま
まかせておけばよいと
腑に落ち
滲み入っていくようなのは
どうしてだろう?
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