抽象への希求が激しくなり
雨も美しくなる
僻地からは
数は少なくても
かならず船が出るのを知っているから
フラミンゴたちも待っている
ミソサザエも待っている
名をまだ付けられていないネズミも待っている
収穫されてから何か月も経た大麦も
袋の中で待っているかもしれない
時どき船倉で得体のしれない音がするのは
待ちわびた大麦の吐息ではないかと
片脚を失った青年は言っていた
俺の脚は先に旅立って行った
と青年は言っていたが
いまさら何を言うのだろう
それぞれのものに
それぞれの旅立ちがあるのは
昔からの常識ではないか
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