2015年3月5日木曜日

嘘っぱちは嘘っぱち



「理論を失った人間は逸話と暗喩に生きる」*
と高橋和巳は書いているが
逸話と暗喩に生きているわけでもない人間が
逸話と暗喩ばかり口にして
なにかを誤魔化しているかに見えるとしても
理論を失ったわけでもあるまい

理論を失わされたと言ってみたところで
やはり
逸れてしまっている

「人が滅びるのは、自堕落によってではない。
むしろそう、その人間を勇気づける理想によってなのだ」**
とも書いているが
記述としては
いいな

嘘っぱち
なんだけれど

記述としてはよくっても

文学は
やはり歌ってしまう
小説だって
歌は歌
引かれ者の歌
めめしい
なめくじののたくったような
べとべとの執着の

価値
あんのかね
ホントに

ないんじゃ
ない?

三十九歳で死んだ
高橋和巳には
わからなかったんだな
カッコいい
断定なんだが

嘘っぱちは
嘘っぱち






*高橋和巳『堕落』第一章 4

**同書第一章 5





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