2019年6月4日火曜日

六月もまた思い出のなかでは


六月もまた思い出のなかではいつまでも豊かなまま!
雨や湿りけを厭うべきものとするような思いは
いったいどこから吹き込まれそうになったものだろう
子どもはアサガオの多様な紫の色あいに驚き
雨の下のかたつむりの生き生きした動きに心を奪われ
脚を濡らす草に付いた雨滴を楽しんで
いつのまにかバッタたちが成長しつつあるのに気づき
露草もはやくも花を咲かせ始めているのを見落とさない
雨が続いて道のわきに泥沼ができれば長靴で踏み入ってみるし
あの小川この小川がしばし濁流のようになる面白さに
あれこれの葉で作った舟をつぎつぎ浮かべては
万物みな流れ去りゆくということの初歩をおのずと学びとっていく
蒸し蒸しとして厭だと洩らす大人の気持ちなどには和すことなく
傘を振りまわすのも黴を突っついて観察するのも楽しく
乾ききっていないシャツや靴下に腕や足先を通すのも
この世に生まれ来て十年にもならない者のささやかな冒険譚のうち
ちょっと大きな川に水が満ちて流れが速くなっている先には
きっとキャプテン・クックやロビンソン・クルーソーや
ガリバーが今も忙しく立ち働く大洋が続いていると想像して
降る雨降る雨が自分の傘やレインコートに当たるのを喜ぶ
ウェンディの後に付いて飛び立つ子らも傘を携え
そういえばメアリー・ポピンズも傘を持って飛来したもの
傘の手放せない時期は思えば半分物語のなかにいるようなもの
どこを歩いても足と地面はピチャピチャおしゃべりし
情けない大人にそそのかされててるてる坊主など作ってもみるもの
おお!どうか明日もあさっても楽しい雨になりますように!
青みどり豊かな楽しい黴がたっぷり食パンに広がりますように!




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