ほんの短いあいだだったが
わたしはその時わたしの神だった
わたしはわたしをすっかり包み込んでいて
たくさんの好奇心と希望とでいっぱいの小さなわたしが
四方八方を忙しく見やって
あれこれに気を配ったり
手を出したりして工夫し
さまざまなことを実現させようとしたものの
なにもやり遂げられず
とうとう
たくさんの好奇心と希望の重さに押し潰されていって
疲れ切って
すっかり心の風船を萎ませて
公園の壁にもたれてずるずると崩れ落ちてしまった
小さな子どものようになっていくまでを
見続けていた
わたしの見続けている小さなわたしは
すっかり憔悴して
手足もどんどんと細くなっていくばかりで
もうからだのどこにも力は入らず
顎も半びらきで魚の干物のようになっていく
そんなわたしを
わたしはすっかり包み込んでいて
はじめにそうだったように
はじめからそうだったように
ずっとそうだったように
すっかり包み込んで見続けていた
ほんの短いあいだだったが
それでも
それは
人間たちが人生と呼ぶ程度には長いあいだで
その期間が
まもなく終わりを迎えようとする今も
わたしよ
わたしはおまえをすっかり包み込んで
見続けている
ほんの短いあいだだったが
わたしよ
わたしはおまえを包み込み続け
見続けてきた
たくさんの好奇心と希望とでいっぱいだったおまえを
わたしは見続けてきた
だれにも見られることなく
知られることなく
いつも闇のなかで手さぐりするばかりだった
いつも裏通りの細道を音もなく行きつ戻りつするばかりだった
とだけ
思っているおまえを
わたしは見続けてきた
ひとけのない浜でひとりで砂の城を作っている時も
だれもいない庭で土いじりをし草花を育てている時も
わたしは見続けていた
ほんの短いあいだだったが
わたしが
おまえの神だった
今なら明かせるが
わたしが神であるようにするために
わたしよ
おまえは在った
ほかの存在理由は
おまえには
一切なかった
だから
おまえはこれまでのようなおまえでよかったし
すべてはあのようでよかった
すべてはこのようでよかった
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