遠いところから来ていたひとが
まだ刈取りもすべては終えていないのに
そろそろ発つ頃あい
たぶんわたしが眠っているうちに行ってしまうのだろう
いつものように
ほんのひとかけら
あの特別なお菓子をテーブルに残して
ひょっとしたら
そのひとが摘んだ草々をあわせて拵えたお茶も
ごく少量
耐熱ガラスのポットに残して
目覚めて
そのひとの気配が失せているのに気づくと
どうしようもないのに
わたしは家の前の草原に出て
何歩か踏み出して見まわし
そのひとを探してみる
ずいぶんはやくに出発してしまったのだろうから
姿はどこにも見当たらないのだが
こんな時の朝の空気が
わたしにはまるで
よみがえりのしるしででもあるかのように嬉しい
なににむかって
なおも
よみがえりなどあり得るというのだろう?
そう思った時もあったが
なににもむかわない
なんのためでもないよみがえりこそよみがえりではないか!
と
いまはもうすこし理解が進んでいる
そうして
だとすれば
すべてはこのようでよかったということではないか?
などと
運命について
ずいぶん性急な暗算をしてしまったりもする
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