うっかり
「秋も深まって…」などと
言ってしまうあなたと
枯れ切った草の
ずいぶんと踏みしだかれた野を
音もそう立てずに行けば
これという面白みの
あるわけでもない沼に出て
鈍色の水面を
しばらくは見つめてしまう
「秋も深まって…」などと
洩らしてしまう
気持ちもわかるにはわかるが
あゝ 立冬も過ぎて
わたくしたちはなんだか
もうすこし
ぺったりとひらたい
枯淡のような雰囲気を
なにか準備するための空間の幕のように
まわりにめぐらされている
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