繋がない コバルトブルーを
革によく似たビニール装表紙に数本の指の腹を馴染ませはじめる。
砂漠 ではないが乾いた荒野だ。しかし
土の下の地下水は豊かなのだろう、棘をたっぷり纏った荒い植物が
群生している箇所がいくつも見られる。
繋がない コバルトブルーを
彼女と彼の車は昨日の土砂降りの際の泥で汚れているが、
食べなかったショートケーキが、ちょっと惜しい。旨い店
という噂だったのに、
書かなきゃ、手紙。短くてもいいから、
速度が重要な場合があるだろ。遅速、速遅、心は走る。または、
歩む。なにも気にせずに、思いどおりの、
ちょっと苦いコーヒーの味わいを思わせる彷徨いかたで。
道草を忘れた時代、宿り木する遊び心も忘れた国、薔薇が何種類も
繁茂していた娘のバルコニーから、
投げ下ろしてもらった小さなパンの味。瞬間写真、波の寄せ来る
浜で、僕のフラットコーテッド・レトリバーは
待っている。失われた家族よ、 幸せは 憩いは 温もりは
まだ薪を 暖炉の脇の書架に置きっぱなしの姉さんの
十数ページしか書いていないまゝの、
鍵付きの日記。閉じられていない 留め具 鍵はたぶん、アランが
チェーンを通して、首に架けている。湿った土地に逝った
繋がない コバルトブルーを
色が物から離れて歩きまわっている広大な森林公園が
自我だ。たこ焼きを スピーカーから流れ出してきた水が
恩寵のようだった、救いの水だ、どの都市? 机のスタンドから
ずいぶん懐かしい童謡が、また、聞こえてきている……
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