子を負へる埴輪のおんなあたたかしかくおろかにていのち生みつぐ
山田あき
みんななかよく助けあって
町も野山も海もきれいに保ち
みじかな犬や猫や小鳥はもちろん
ほかの動物も魚もいつくしんで
まいにちみんな楽しく生きていこう
…と子どもの頃に教えられたし
そうすべきだと思ったし
そう努めていこうと思ったので
世の中を見ているのがぼくにはつらい
ずっとつらかったしいまもつらい
いやいまはもっとつらい
困っている人や苦しんでいる人を
どうしてすなおに助けられないのか
みんなのたくさんの知恵をあわせて
どうして問題を解決していけないのか
だれもが不安に思わない世の中を
どうしてまっすぐに作っていけないのか
その理由もたくさん見聞きしてきたけれど
それら理由をもっともだと聞き続けているうちに
だれもが歳をとり国は歳をとり文明は歳をとる
あたまがいい人やよく考える人ほど
だからあきらめるしかないんだよ
どうにもならないんだよ
しょうがないんだよと結論することになり
けっきょくぼくらは無力なだけで
人間はどうしようもなく破局に向かうだけで
他人はどこまでも信じられないもので
だから幾重にも何重にも他人を疑いに疑って
あらかじめ罠も仕掛けておかないといけないようになり
こころは閉塞と枯渇と諦念と停止に向かう
みんななかよく助けあって
町も野山も海もきれいに保ち
みじかな犬や猫や小鳥はもちろん
動物も魚もいつくしんで
まいにち楽しく生きていこう
…と子どもの頃にぼくに教えたのは
だれだったのだろう、いったい?
あの大人たちはだれだったのだろう?
あの大人たち自身がだれひとり
そんな生き方なんてしなかったのを
いまのぼくはよく知っているけれども
でもぼくのしたいのはもう非難ではなくて
実際はそう生きなかった大人たちの口から
子どもにむけてはひかりのような言葉が
語られたのだという奇跡に驚くこと
ぼくのしたいのはもう非難ではなくて
実際はそう生きられずに消えていった大人たちの口から
あとに続いていく次の時間のなかの地球滞在者たちにむけて
つよく不可能な険しい道を指し示すひかりの言葉が
しょうこりもなく語られ続けてきた途方もない奇跡の伝承を
人間と呼び人類と呼ぶのだと認識しなおすこと
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