古い駅舎は教会のような石造りで
壁は二面しか残っていないが
白さの十分残る内壁に苔が半ばまで生え上がった様は
どこか清浄さとそら恐ろしさを醸し
しかも下には鮮やかな緑の丈低い草が繁り広がっているので
生と蘇りと
そして
死(たぶん、内壁の白さが骨を思わせるからか…)とが
昼夜分かたず空に開かれた此処に
すべて同時にあり続けているようだった
駅舎だったのなら内側の地面は土ではなかっただろうに
どうして床を覆っていたはずの石版が除かれ
土が剥き出しになって
今これほどの緑が溢れているのだろうと
少し訝しく思われるが
それについて考えながらでも
もう少し此処に立っていてみようと思う
十分ほど
いや三十分ほどでも
立ったまゝでいようか
壁のすっかり崩壊して外と繋がったあのあたり
あそこにカメラでも設置して
十分ほど
いや三十分ほどでも
立ったまゝでいる人体を撮ったら
どう映るだろう
などと想いながら
それについても考えながら
もう少し此処に立っていてみようと思う
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