2017年2月4日土曜日

もう少し此処に立っていてみようと思う



古い駅舎は教会のような石造りで
壁は二面しか残っていないが
白さの十分残る内壁に苔が半ばまで生え上がった様は
どこか清浄さとそら恐ろしさを醸し
しかも下には鮮やかな緑の丈低い草が繁り広がっているので
生と蘇りと
そして
死(たぶん、内壁の白さが骨を思わせるからか…)とが
昼夜分かたず空に開かれた此処に
すべて同時にあり続けているようだった
駅舎だったのなら内側の地面は土ではなかっただろうに
どうして床を覆っていたはずの石版が除かれ
土が剥き出しになって
今これほどの緑が溢れているのだろうと
少し訝しく思われるが
それについて考えながらでも
もう少し此処に立っていてみようと思う
十分ほど
いや三十分ほどでも
立ったまゝでいようか
壁のすっかり崩壊して外と繋がったあのあたり
あそこにカメラでも設置して
十分ほど
いや三十分ほどでも
立ったまゝでいる人体を撮ったら
どう映るだろう
などと想いながら
それについても考えながら
もう少し此処に立っていてみようと思う




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