2017年2月17日金曜日

東京タワーのわきに

 

風景を
比喩や記憶で汚さずに見るのは
むずかしい

感情を塗さずに見るのは
むずかしい

ビルが細く
二本立っていて
夕焼けの空がむこうにある

裸になった
冬の
柿の木がある

買ったばかりの
ダイヤの指輪をつけた若い女が
ひとつも車のない
駐車場の入口に立って
待っている

雑な美意識の人間が作ったに違いない看板が
いくつも壁に付いている
それらについては
たぶん
描写する必要もなく
見つめる必要もない

外国に
もう
行く気もないな

…つぶやくように
しみじみ
思う

なにか
ちょっと食べたいような
そうでもないような
(…死を
(また
(思いながら…

遠くに見えている
東京タワーを
もっと
見つめてみる

巨大な酸漿を想像して
宙空に
浮かばせてみる

東京タワーの
わきに



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