…で、けっきょく彼は会いに行けたの?
と声が聞こえているうち
目が覚めて
後は
やわらかいポップスのような
誰の特殊な趣味のためでもない
誰にもそれなりに快く聞こえほど曖昧な
どうとも捉えられるようなメロディーが響くばかりになり
それも
どこに響いているのか
はっきりとはわからないものの
どこにも響いているような
感じで
会いに行けて
誰彼に再会している彼の様子が
見えているようだったが
覚醒とか
もっと単純に
目覚めとか言われる状態が
次第に
強まってくると
彼というのが誰なのか
どこの彼で
どこの彼ではないのかなど
消滅というのとは
違って
世界の大気の中に
普遍化されていくかのように
薄まっていき
いつか
全く
見えも
聞こえも
しなくなっていった
…で、けっきょく彼は会いに行けたの?
という声だけが
はっきり記憶に残り
夢
だったわけか
と
ごく当たり前に
思い始めているけれど
夢と現実が分離されているなどとは
もちろん
もう
思ったりしていないので
起きてからの
瞬間瞬間や
一挙手一投足の中に
さっきまでの
光景や
音声は
ぴっちりと
浸透してきて
いる
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