わたしの目から見ると
人々はだれもが
なにかをかたちあるものとして実現し
与えられた時間や空間を
その人なりの意味あるものとしてしっかりと用いている
その人の観念の中にしかなかったなにかを
この世の物質の世界に造形しおおせている
わたしは驚くのだ
この堂々とした迷いなき行動に
この物質界に生まれた者はこうすべきだと
いうかのような自信に満ちたありように
わたしだけは違う
なにをもかたちあるものとはせず
与えられた時間や空間を
わたしなりの意味あるものとしてしっかりとなど用いられず
観念の中に浮かび来るなにものをも価値あるものとは思えず
この世の物質の世界に造形して押し出そうとなどしない
わたしは驚くのだ
このふらふらした迷いばかりのありように
この物質界に生まれた肉体に十分に生を享受させるすべもないまま
その肉体とはいつも遊離して
どこにあるともはっきりわからないまま
この世の外ならどこへでも*
などという宣言さえ必要のないほどの常時不在の
わたしの浮草のさがに
*ボードレール「ANY WHERE OUT OF THE WORLD」(『パリの憂愁』)
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