高価でない腕時計を何本も持っているが
どれも電池が切れてしまったので
大きな電気機器店に行く用事があったついで
いっぺんに三本
電池を交換してもらってきた
交換が済むのを待っているあいだ
売られているたくさんの時計をつぶさに見てまわった
安いのも高いのも
シンプルな顔立ちのも
やけに込み入った顔立ちのも
いろいろあって
新たにひとつ選ぼうとすれば
迷いに迷ってしまうだろうと思ったが
正直なところ
あえて大金を出してまでほしいようなものがひとつもなくて
ホッとした
それだけでなく
迷いに迷ってまでして
新たにひとつ選ぼうとするようなことに
もうすっかり飽き切ってしまっているのに気づいて
ちょっと
微笑んでやりたくなった
誰にむかって
微笑んでやりたくなったのか
よくわからなかったが
とにかく
もう終わったんだ
いろいろなことがすっかり終わっているんだ
迷いに迷ってまでして
新たにひとつ選ぼうとするような
そんな人生の低学年みたいなこととは
もう
なんの縁もなくなっているんだ
と
言ってやりたかった
誰にむかって
だか
よくわからなかったが
べつに
誰にむかってでもいいし
誰にもむかってなくてもいい
言う
ということは
じつは
つねに
唯我独尊している
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