2023年11月22日水曜日

芭蕉野分して盥に雨をきく夜哉

 

 

 

今年のホームレス・ファッションの写真が

SNSに流れてきた

 

ふううん。

 

ゼレンスキー・ファッションや

ガザ爆死子供頭蓋骨吹き飛び血だらけファッションなどは

2023年の秋冬ファッションには

やっぱり

間に合わなかったのネ

と思いながら

ちょっと

見つめてしまう

 

SNS上では

ついにファッションもここまで来た

などと

トレンドについての無知をさらけ出したコメントを

書いてしまったりしている人もいるが

ホームレスふうファッションは

遅くとも2017年頃にはネット上で目につくようになっていたの

いまさら驚いているようでは

5年以上の時代遅れをさらけ出していることになる

https://www.refinery29.com/en-us/2017/02/138911/n-hoolywood-homeless-people-collection-controversy

 

2019年の中国ネットでは

仙人ふうのホームレスファッションが街に出現しているのも

取り上げられていた

https://gori.me/humor/funny-images/57077

 

基本的に

ファッションで提示される新デザイン製品は馬鹿らしいまでに高価だが

それが

低価格どころか

値のつかない使いまわし衣類をどうにかこうにか纏って凌ぐ

本物のホームレスのファッションに触手をのばすという

超対極どうしの接触の風景が

展開されているシーンだということに

いちおうは

なる

 

ファッション業界に関わる気の微塵もない者としての

楽しみ方の勘どころとしては

本来

価格破壊にこそ意義のあるホームレスのファッションが

高値取引のファンション業界に上っ面だけ

取り込まれて

あるいは

取り込まれそうになって

高額商品としての価値を付加されてしまうという

虚栄の市そのものの光景が醸し出す

皮肉

というか

苦み

というか

アイロニーそのものの現前を

ちょっと見てみる

というのが

ある

 

これって

ようするに

日本の

あの

超あざとい

侘び寂び文化だよなあ

思う

 

天和元年秋、1681

深川隠棲の頃

門人李下が庭に植えてくれた芭蕉の木の葉を

台風の風雨が激しく翻弄し

茅舎こと

雨漏りのするわび住まいのボロ屋で

杜甫や蘇東坡の侘びの生活や詩境をしのびながら

38歳の松尾芭蕉は

このように

詞書きし

また

発句を詠んだ

 

老杜、茅舎、波風の歌あり。

波翁ふたたび此の句を侘びて、屋漏の句作る。
其世の雨をばせをの葉にききて、独寝の草の戸。

  芭蕉野分して盥に雨をきく夜哉

 

この時

いわばホームレス的な

貧しい生活境涯に芭蕉はあって

台風の風雨に苛まれる植物の芭蕉の葉の音や

家の中に屋根から漏れてくる雨水は

ファッションどころでない

正真正銘の生活実態だった

誰に見せるための演出でもなければ

誰も見ていてくれない

孤独な

孤絶した生活実態だった

 

これを彼が

詞書きや発句として書き残し

弟子たちに広まって

残っていく過程で

恥も外聞のない

文化

などと呼ばれてしまったりする

軽佻浮薄なファッション擬態に堕していってしまう

 

ああ!

日本文化なるものとは

大昔から

ちょっとした驚かしの

お遊びの

ホームレス・ファッションものまねに過ぎなかった!



 

 

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