紅葉や
黄葉や
うつくしくなる季節になったが
名所といわれるところに
今年は
わざわざ
出向こうとも思わない
もう
人生のあちこちで
見尽くしてしまった気がする
だからといって
紅葉狩りに
もう
出かけないなどと
決めつけるわけでもないのだが
なんとなく
今年は紅葉にも
黄葉にも
満腹な気がしている
ところが
名所でもなく
だれも見にもこない細道の
ちょっと小ぶりな紅葉に陽が射して
ふと立ち止まってしまうほど
鮮やかに
赤が燃えているのが
うれしい
住宅街の坂の崖や
錆びているところも目立つ鉄柵に
伸びたり
絡まったりした蔦が
みどり濃い葉にまじって
真っ赤に葉を染めているのも
特別な瞬間を見せてもらっているようで
うれしい
どこかの山のほうや
さらには吉野や
京都の有名どころに紅葉狩りに出ていれば
これらの無名の紅葉には
たぶん出会えなかっただろうし
出会えたとしても
有名どころの紅葉と比較して
軽んじて過ぎただろう
紅葉ひとつ取っても
多過ぎたり
豊か過ぎたりすることと
なかなか
うまくはつき合えない
ふだんの生活の範囲の中で
無名の紅葉たちに
小さく出会い
思いもしなかった
驚くばかりの鮮烈な赤に射すくめられるのも
なんと豊かな瞬間であろうか
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