2024年12月8日日曜日

無名の紅葉

  

 

紅葉や

黄葉や

 

うつくしくなる季節になったが

名所といわれるところに

今年は

わざわざ

出向こうとも思わない

 

もう

人生のあちこちで

見尽くしてしまった気がする

 

だからといって

紅葉狩りに

もう

出かけないなどと

決めつけるわけでもないのだが

なんとなく

今年は紅葉にも

黄葉にも

満腹な気がしている

 

ところが

名所でもなく

だれも見にもこない細道の

ちょっと小ぶりな紅葉に陽が射して

ふと立ち止まってしまうほど

鮮やかに

赤が燃えているのが

うれしい

 

住宅街の坂の崖や

錆びているところも目立つ鉄柵に

伸びたり

絡まったりした蔦が

みどり濃い葉にまじって

真っ赤に葉を染めているのも

特別な瞬間を見せてもらっているようで

うれしい

 

どこかの山のほうや

さらには吉野や

京都の有名どころに紅葉狩りに出ていれば

これらの無名の紅葉には

たぶん出会えなかっただろうし

出会えたとしても

有名どころの紅葉と比較して

軽んじて過ぎただろう

 

紅葉ひとつ取っても

多過ぎたり

豊か過ぎたりすることと

なかなか

うまくはつき合えない

 

ふだんの生活の範囲の中で

無名の紅葉たちに

小さく出会い

思いもしなかった

驚くばかりの鮮烈な赤に射すくめられるのも

なんと豊かな瞬間であろうか

 




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