暮れがた
晩秋の
日暮里駅に入っていく
がら空きの
常磐線に
ながながと乗って
もう
日も落ちて
線路の上はどこも
まっくらで
晩秋の常磐線は
夢の列車のようで
思い出の列車のようで
懐旧の列車のようで
そうか
わたしももう
思い出されるひとと
なっていたか
としみじみしながら
蛍光灯の白いあかりで
闇のなかに
ながく
霊の世界のどこかのように
浮き上がる
晩秋の日暮里駅へ
入っていく
線路の
暮れがたの暗さは
どうだ?
ぽっと浮き上がる
駅の霊のような白さは
どうだ?
誰にいうでもなく
思いながら
晩秋の
日暮里駅に入っていく
まるで
遠い遠い
どこかへの旅の途中
見知らぬ仮泊地に
ひととき
夜を休もうとする
旅人に
ちょっと近づいた心持ちにも
なって
がら空きの
常磐線に
ながながと乗って
いつのまにか
わたしも
じつは居ないひとに
なり終わって
暮れがた
晩秋の
日暮里駅に入っていく
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