2025年10月24日金曜日

晩秋の日暮里駅に入っていく

 

 

 

暮れがた

晩秋の

日暮里駅に入っていく

がら空きの

常磐線に

ながながと乗って

 

もう

日も落ちて

線路の上はどこも

まっくらで

晩秋の常磐線は

夢の列車のようで

思い出の列車のようで

懐旧の列車のようで

 

そうか

わたしももう

思い出されるひとと

なっていたか

としみじみしながら

蛍光灯の白いあかりで

闇のなかに

ながく

霊の世界のどこかのように

浮き上がる

晩秋の日暮里駅へ

入っていく

 

線路の

暮れがたの暗さは

どうだ?

ぽっと浮き上がる

駅の霊のような白さは

どうだ?


誰にいうでもなく

思いながら

晩秋の

日暮里駅に入っていく

まるで

遠い遠い

どこかへの旅の途中

見知らぬ仮泊地に

ひととき

夜を休もうとする

旅人に

ちょっと近づいた心持ちにも

なって

 

がら空きの

常磐線に

ながながと乗って

いつのまにか

わたしも

じつは居ないひとに

なり終わって

暮れがた

晩秋の

日暮里駅に入っていく

 

 





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