2025年10月26日日曜日

まもなく白の靄のなかに

 

 

 

小雨は綿雨のようになり

此処では傘を差す必要も今はない

 

けれども

またすぐにもう少し太く

もう少し大きな粒となって降ってくるだろう

むこうの山嶺は

地上に降りた雲に覆われて

ただやわらかい白だけの世界となっているけれども

あのように此処も

まもなく白の靄のなかに

小さな雨滴の綿のなかに包まれてしまうだろう

 

雨滴がもっと大きくなるとは言っても

傘なしでこの草原を歩きつづけてもあまり濡れないほどの

温かくさえ見えるやさしい霧雨のままだろう

この白さに視界を奪われることのなんという幸せだろう

まるでこの白さとともに此処に現れたかのような意識の

このやわらかさのなんという快さだろう

 

霧雨の雨滴はもうすぐほんの少し大きさを増し

頬を湿らせ手の甲を湿らせ

ひょっとしたら鼻の先をすこし拭いたくなるかもしれない

けれども傘を開くほどではないだろう

やわらかい白に隠されてしまったむこうの山嶺を想像しながら

まだこの草原をゆっくり歩き続けられるだろう

 

暮れれば今日は少し冷えるかもしれない

太い木枠の窓に置かれたランプが暖色に明るみ

夕暮れの室内をきっと懐かしい色と薄闇で染めていくことだろう

 




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