癒えたやまいの墓を
澄明山脈の見晴らせる
うみべの丘に
建てようとふかい紺の霧のなか
てさぐりですすんだ
でんわが空でなると
ちょっとこわいね
トゥルルル、トゥルルル、
ちょっとこわいね
やまいの死骸を
「癒えた」に担がせて
ぼくはスコップと水仙の束持って
海があけがたのひかりを
すこしずつ宙に染み入らせている
丘のうえに立って
おおい、イエタ!
海があけがたをつくっていたのか!
と言った
発見ですね、発見ですねと
「癒えた」が目をきらきらさせた
やまいには理由がある……
と気づいていなかったわけではない
うっすらと気づきの雪は降る
積もるまでは「癒えた」の目は開かない
発見ですね、発見ですねと
「癒えた」の目のきらきら
終わったのだ……と思った
ああ 気づきの雪降り
あけがたの海の爽快
さくさくの気だ
墓ほり日和になりますね
と「癒えた」が言った
うん、うってつけのあけがただ
言いながら
やまいをつよく抱いた
つよくつよく
抱いた
でんわが
もう
空ではならない
たしかさを
抱いた
[初出] NOUVEAU FRISSON (ヌーヴォー・フリッソン) numero 35 (1995年6月30日)
編集発行人 駿河昌樹
発行場所 東京都世田谷区代田1-1-5、ホース115ー205 〒155
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