2026年1月27日火曜日

癒えたやまいの墓掘りに

  

 

 

癒えたやまいの墓を

澄明山脈の見晴らせる

うみべの丘に

建てようとふかい紺の霧のなか

てさぐりですすんだ

 

でんわが空でなると

ちょっとこわいね

トゥルルル、トゥルルル、

 

ちょっとこわいね

やまいの死骸を

「癒えた」に担がせて

ぼくはスコップと水仙の束持って

 

海があけがたのひかりを

すこしずつ宙に染み入らせている

丘のうえに立って

おおい、イエタ!

海があけがたをつくっていたのか!

と言った

発見ですね、発見ですねと

「癒えた」が目をきらきらさせた

 

やまいには理由がある……

と気づいていなかったわけではない

うっすらと気づきの雪は降る

積もるまでは「癒えた」の目は開かない

 

発見ですね、発見ですねと

「癒えた」の目のきらきら

終わったのだ……と思った

ああ 気づきの雪降り

あけがたの海の爽快

さくさくの気だ

 

墓ほり日和になりますね

と「癒えた」が言った

うん、うってつけのあけがただ

言いながら

やまいをつよく抱いた

つよくつよく

抱いた


でんわが

もう

空ではならない
たしかさを

抱いた

 

 

 

 

 

 

[初出] NOUVEAU FRISSON (ヌーヴォー・フリッソン) numero 35 (1995630)
編集発行人 駿河昌樹
発行場所 東京都世田谷区代田115、ホース115205 155






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