短歌草紙「行」第二号 平成八年六月(1996年6月)所収
白肌も胸のふるえも求めねば少し離れて夏祭りまで
酸漿の赤きを白き白き歯に軽く噛みつつわが腕(かいな)とる
わが生(あ)れし八月近し一夜二夜花火の夢のしずかに続く
触れし胸ことに乳首甦る立夏のあつき闇のひとりよ
蛍光灯しらしら寂し脱衣する滅びし者の女のごとく
なお触れぬ部位求めこころ滑るとき寄せくる波の青の数々
口もとのふと寄る皺のいよよ濃く立夏を刻む緑濃き園
絡まり来る中指の腹紫陽花の花弁の肌(はだえ)乾きていたり
ふと欲のなき肉体の澄みゆくか滝近き水面(みなも)白き鳥過ぐ
詳らかに詳らかに見るどの肌も甲虫のごとき精巧さ持つ
夜の床に吹き入る風のあきらかに悔い持たぬ吾(わ)には人肌に似
どの恋もはるばると遠き夏の沖大き白船近づかず去らず
脱ぎ置きし服の皺影さかのぼる古(いにしえ)のかたち他にあり得
終着の駅人声は絶えており低き讃歌のごとき蜂群れ
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