1997年7月 26首
「わたしが死んでも、かわりはいるもの」
『新世紀エヴァンゲリオン』 テレビアニメ編・第拾九話
綾波レイうす紫のその髪をなぞるべく指ふたたび洗ふ
シンクロ率ゼロの歳月なほ続くわれもひとりの惣流アスカ
友をみな失ひて碇シンジ立つ渚にずつとぼくも来てゐた・・・・
愛求める?愛とはなに?と問ふことはなに?
どうしたらいいのかと独語屹立すロンギヌスの槍とそれを認めよ
愛=いつはり 涙=いつはり こころさへ思念さへ捨つるべきこの地点
原点に家族崩壊持つゆゑかエヴア・パイロットらにふかく親しむ
終はりなき自問の流れ終はりなき齟齬として立つわれもシンジか
人類は悪より生まれ落ちしもの滅びよとついあなたにも言ふ
グノーシス主義者のわれの待つものをまた確かめむ 平曲を聞く
線と色のアニメなる虚構さびしさの回路通じてこころに入るか
深夜三時また『エヴァ』
人生はなるほど補完計画でなにを生むべく澱む魂
じぶんとは誰かと問はぬ一刻を夏空はやく行く雲のむれ
生なべて尽きぬ記号のたはむれか否といふべくこころは痛む
われらなる脳との戦なほさらに激しくならむなにを頼まむ
経済効果二億円なる現はれはなにの求めのうつせみの様
守るものしかし牽固に隔てする心の壁のATフイールド
逃げちゃダメだ逃げちゃダメだと呟きてをりしか十四の冬のわたし
人類といふ抽象語なによりも内奥にありて「われ」てふ鎧
死と再生シト再生か敵こそはメタレヴェルなるわれのたましひ
生は死の始まりしかし/そのゆゑに私のこと好き?死にゆく者を?
微笑みは偽りなべて微笑みはとにかくそれはとりわけそれは
溶けあへば孤我は壊れる孤の岸に立ち尽くさずに愛すといふか
「真実」も「偽り」も大脳生理学のいづれ解くべきホルモン問題
殺してやる殺してやるとたれにいふでもなししかし今日もまたいふ
[初出]Nouveau Frisson(ヌーヴォー・フリッソン) numéro 67 (1997年9月)
編集発行人・駿河昌樹
東京都世田谷区代田1-1-5 ホース115-205
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