短歌草紙「行」第四号 平成九年一月(1997年1月)所収
ひたすら精神の作戦を研究しながら、
乱世に生きることの容易さを警めつつ
やつてゆきませう。
谷川雁
(昭和二十年、野砲兵とし
ての出征時に、日高六郎
への手紙で)
わたくしの二十世紀を吹き飛ばしぽんぽんぽんぽん真冬の花火
月光浴かならず月焼けするようにふたり裸で屋根に寝るのよ
踏み込みし刹那石榴の幻の宙行くを視し奥羽本線
風俗の乱れゆくこと楽しくてマンゴ・パパイヤ抱えきれずに
「戦争か?」「さあ、どうかな」
曲がり曲がりなお曲がり続く柔らかき駆の何処にいまきみはいて
猫の目に未来はいつも大きくて目の見開きをまいにち倣(なら)う
会えばいつも重い話になる人といて空見てる 来い来い、円盤
乱れ髪幾すじか薄き乳輪に貼りついている姿もよくて
荒淫というほどでなし陰(ほと)でなし シェリー垂らしてまた吸い始む
葬儀場の椿みずみずしく崩れかのひとの骨潤うらしも
ジーン・
いいでしョと助手席に乗せてくれし人アストン・
古雑誌とはいえ髪も乳首も太股に落ちる陽もあざやかで
これほどの醜さもあるかしげしげと老(ろう)肌(き)に大きダイ
やれやれと新しき高きビル昇るトーキョー・グレーの色すてきとか
三島全集売り払いたり書架も払いカメリヤの大き鉢置きにけり
冬紅葉かがやくものをこの数日しきりと肌に付けたき気分
孝行をしたい時には潔く美しく亡きものであれ、親
アミちゃんとユミちゃんの歌う声がする 八百屋のハッちゃん以前(まえ)から純真
駿河なんてと軽んぜられて帰る道ああ餡蜜が今日は喰いてえ
不忍池まで緑の傘さして御家人の裔わが家族過ぐ
買い物につい出るだけで疲れ果てBossとかJive眺めていた
『性欲的生活(ウイタ・セクスアリス)』
まなざしという見苦しきもの隠す気配りもなきガキの時代か
ちょびちょびと「言語道断」啜りつつ言葉少なの逢瀬でしたネ
けっきょくはどいつもこいつも……
腿見てとすぐスカートをあげるから唐詩選などまた開くわけ
『正徹日記』今日は開かずダンヒルの箱わきに置くそれも吸わずに
その昔ポインセチアをくれしひとの急逝聞きてポイン、ポ、ポイン
敬愛する唯一の作家バロウズさまあなたさまならケツあずけます
「楽天平成にっぽんパンザーイ!」と平成八年の天皇誕生日に
人生のかるさの果てよ拷問も処刑もことば辞書には出てる
スティーグリッツによるオキーフのヌード写真を見て
オキーフの陰毛ならぬ陽毛の豊かなるかな1919
ユリ好きの女に贈られたるユリのああ凡庸のなんたる白さ
日本びと寂しからずや会話するひとびとの首のかくかく動く
朝ぐもりあかあかと陽の色したるワンピース待ちている九段下
教会に入りゆくひとは夏服の薄いピンクやブルー、イエロー
愛の語をしみじみと見し少年期iよりa音好みてありき
ねっとりと赤ん坊の便鬱金なり武蔵野深く列車入りにき
此道や行人なしに秋の暮 芭蕉
わが道も行くひとなしに秋の暮れるるるるるると駿河昌樹す
流行はとにかく外す 柿の木の柿の実食べて柿の種出す
[初出]短歌草紙「行」第四号 平成九年一月(1997年1月)
(編集発行人:駿河昌樹 発行場所:東京都世田谷区代田1-1-5 ホース115-205)
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