2026年1月27日火曜日

つとめ

 

 

 

咳き込むたびに

待たれていたものが垣間見える

冬は発見のときだ

ぼくの底を抜けるとき

なにものの自覚があるだろう

海面に顔を出したイルカ

木のうろから覗くシマリス

からだに封じ込められて

見ることだけが愛だったのか

悔いがあるわけではない

ぼくをしばらく仮面にして

押し流されてきたものよ

いずれ呑み込まれるだけの

ぺらぺらの仮面のぼくが

見たものは見られて

踊りあがらんばかりの豊饒

草をみて草といい

それを吹く風を風という

思えばなんという供養だろうか

見ることも言うことも葬祭だった

つとめが済んだら風はやむ

ふっとやんでシマリスもイルカも

かならずべつのまなざしに

ゆだねられていくのだ

 

 

 

 

 

[初出] NOUVEAU FRISSON (ヌーヴォー・フリッソン) numero 35 (1995630)
編集発行人 駿河昌樹
発行場所 東京都世田谷区代田115、ホース115205 155





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