咳き込むたびに
待たれていたものが垣間見える
冬は発見のときだ
ぼくの底を抜けるとき
なにものの自覚があるだろう
海面に顔を出したイルカ
木のうろから覗くシマリス
からだに封じ込められて
見ることだけが愛だったのか
悔いがあるわけではない
ぼくをしばらく仮面にして
押し流されてきたものよ
いずれ呑み込まれるだけの
ぺらぺらの仮面のぼくが
見たものは見られて
踊りあがらんばかりの豊饒
草をみて草といい
それを吹く風を風という
思えばなんという供養だろうか
見ることも言うことも葬祭だった
つとめが済んだら風はやむ
ふっとやんでシマリスもイルカも
かならずべつのまなざしに
ゆだねられていくのだ
[初出] NOUVEAU FRISSON (ヌーヴォー・フリッソン) numero 35 (1995年6月30日)
編集発行人 駿河昌樹
発行場所 東京都世田谷区代田1-1-5、ホース115ー205 〒155
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