…しばらく前から、夜、死ぬようなはやさで寝落ちするようになった。夢の中に行ってしまう。なにかが欠落している国々を訪れていることが多い。なにか、ひとつふたつが。それらの国々では、そんな欠落が魅力で、なかなか去りがたい思いにさせられる。
希望のない国に行っていた
濃くうすく
霧が流れ
ひとびとは街のどこかで
よく
ひとりで
立ち止まっている
だれも希望を持たないので
だれもが深い
現在時が黄金のようで
どこに行く必要もない
ここと
自分とに
すべてがある
希望とは
つまり
気を散らし続ける悪
思いと
思いのちからを
ありもしないほうへ放電し
代価の時間と
いのちは
なかなかの額に上る
街のどこででも
ひとり
立ち止まってみる
さらには
すべての動作を
ゆっくりとしてみる
ティーカップを口に運ぶのにも
時間をかけ
まばたきひとつも
スローモーションのように
して
それだけで
よみがえってくる
あまりにたくさんのこと
じぶんひとりを超えた
むかしの
むかしの
遠いひとびとの
しぐさ
体温
希望を持たない
ゆたかさに
立ちつづけていた
数千年ほど
あの国の
街の
そこ此処
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