2013年5月25日土曜日

眠りが降り続けている





朝方まで起きていて
雨がしずかに降り出したのを確かめてから
たまの休み
寝床に入って
気にかかっているのになかなか読み進められない本を
しばらくは寝ころびながら読もうかと
枕もとの小さな明かりをつけてページを繰っているうちに
うとうとと意識は遠のき
それでもふっと起きては文字を追い
また意識が遠ざかりするうちに
本を閉じて明かりを消し
寝てしまうことにしたのだったが

休みだったので
疲れた体からたっぷり疲れが染み出てくるほどに
夕方までながく寝ていてよかったのだが
ときどき意識が戻るたび
あかるくなっているカーテンのむこうに
雨が降り続けているのを感じ
きょうはずっと雨降りか
ずっと雨降りなのかと思ってはまた眠りに落ちて
雨降りの休日のしずけさをじぶんの体の一部か
本体のように感じとりながら肉体のほうは放り出して
生活のこまごまについて采配するふだんのじぶんとは違うじぶんに
すっかり成りながらしずかに雨の戸外となっているじぶんで
こんな状態を寝ているといえるのか
むしろもっと本来的な状態に戻っているのではないのかと
思いが浮かぶのを感じながら同時にそんな思いはどこに浮かんでいるのか
やはり肉体の脳のなかに浮かぶしかなく
どこまでも肉体に縛りつけられた物理的な現象として
思いも感覚のすべても夢もイメージも浮かび続け
それを錯覚して肉体とはべつの領域に思いや感覚が在るかのように
思い込んでしまうだけのことなのかと
思いながらまたふっと目覚めて
寝ているあいだの夢のなかのことでしかなかった思弁なのだと
すぐにわかるものの
だとすれば肉体に縛られているという思いも
肉体に縛られている思いによって二重の束縛が起こっており
それは理屈の上では逆に自由になっているということではないのかと
思いだけはかってに進んで
その先をたどっていこうという気にはならず
また眠りに落ちてしまっていて
今度は思いが進んでいかない澄んだ水流のような眠りで
雨が降り続くなか
もう午後も遅くなってきているだろうに
まだ寝ているなぁ
今日はまだ寝ているんだ
よく寝ているなぁ
時間としてはそんなにながく寝ているわけではないけれども
よく寝ている感じの日だなぁと
眠り続けている

しずかに降り出した雨は
まだしずかに降り続けているようすで
もう午後も遅くなってきているだろうに
時間としてはそんなにながく寝ているわけではないけれども
眠り続けている
しずかに降り出した雨として
もう午後も遅くなってきているだろうに
しずかに眠り続けている

雨が眠り続けている

眠りが降り続けている







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