雪のむこうを見ても
降り下ってくるのを見上げても
積もったものを見降ろしても
見たいと思っているものなどは
見えるわけでもない
垣間見えさえせず
だから
雪についてなにごとであれ
思うのはやめる
すぐにやめる
電波を受ける機械を点けると
だれもが
雪、雪、雪、と
発音し続けていて
いくつかの定型の語りが
あまりに多くの人らによって
飽きもせず反復されている
それらの発音の連続も
なおのこと
なにを見せてくれるわけでもない
そうして
けっきょく雪のない部屋に
籠るでもなく籠り
あれこれに
しずかに気を散らしながら
しかし
ときにはひとつの懸案に
集中してみながら
時を暮らし
これが雪ということか
と得心したり
しなかったり
曇った窓を
たまに指でこすって外を覗き
これも雪ということか
と思ったり
やはり
得心はしなかったり
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