豪華なディナーだったけど
ちょっと疲れたな…
帰ってきてそう言うと
しばらくして倒れ
死んだんだよ、ディーン
という知らせが
メールで来ていた
旧知の異国の友の
まぁ今さら若くもないから
そう不幸ともいえないながら
死の知らせに
ちょっとしみじみし
ひととき物思いにふける…
なんていうのが
軽い詩なんかにはよさそうな扱いだけど
よく知ってるんだ、ぼく
ディーンってわるいやつでね
奥さんがいない時に家に若い娘たちを呼んで
まぁいろいろやらかしていたし
それに武器商人として
精力的にほうぼうで紛争を起こすのに努力していたしね
なんどか
現地の人間たちの頭を
自分でもピストルで撃ちくだく遊びもしていたと
本人から聞かされたしな
彼とは
中東のあそこやあっちの街のバーで飲みながら
へえ、すごいもんだな
たいした度胸だな
踏み越えていく天才だな
などとなんとなく持ち上げながら
いっしょに乾杯とかしちゃって
(ディーンはとにかく乾杯好きなやつだった)
そうしてディーンに便宜を図ってもらって
中東ミニ旅行をしたこともあったんだ
おもてむき
ひとに合わせるのがうまいんだ、ぼく
まったく認めてもいない
いつか殺してやろうかとさえ思うような
誰もかれもに合わせるのがね
ディーンの死に
ようやくの死に乾杯!
なんて
ひとりで祝杯をあげようかな
東京タワーを見下ろすこのマンションの
ベランダに今夜は出て
とも
思うけれど
乾杯はしない
ディーンとともに
ぼくの人生からは永遠に「乾杯」を葬るのさ
ぼくはといえば
手を下さずに
すべてを処理していく
処理されていくままに任せる
やり口
復讐スルハ我ニアリ、我コレニ報イン
そうおっしゃる神にすべてを任せ
じぶんのカルマは
けっして積まないやり方
しかし見続ける
たゞ見続ける
神の目として
人界の者たちの軸を失った所業の数々を
たったの一度さえ
信仰を洩らしたことはない
世界のあらゆる似非一神教を滅ぼすために来た
唯一神の冷酷な信者
ぼく
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