2015年2月4日水曜日

古びた傷だらけの透明プラスチック越しに




中学校だろうか
高校だろうか

用事で訪れ
ちょっとトイレに行きたくなったのだが
この学校のトイレはどれも
廊下の角々にあり
どれもが広めの個室で
しかも透明プラスチックの壁と扉で
かろうじて廊下と隔てられているだけ
幸いなことには
透明プラスチックの壁と扉が
古びて汚れ
ざらざらと傷つき
使用中の人の顔までははっきり見えないが
それでも服装だの座り具合だのは
ちゃんとわかる

学生たちの通行の多い廊下で
こんなトイレに入るのは憂鬱だが
それでも勇を決して
いくらか学生の通行の少なめな廊下の
突き当たりのトイレに入った

入ったものの
内側から外の廊下の様子を見ていて
あゝ学生が少なくなったな
むこうの学生がこっちに向かってくるが
途中で曲がってくれないかな
などと気持ちの落ち着かないまゝ
廊下の観察をし続けている

なんのためにトイレに入ったか
忘れてしまいそうなぐらい
長いこと
長いこと
古びた傷だらけの透明プラスチック越しに
廊下の観察を続けている
                                  
   

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