うちには祖父が三人いて
その祖父がとっかえひっかえ性交する祖母も
七人同居しておったので
けっこうな大家族であったが
そこへおらの父が八人おってどれが精子的に父か
ぜんぜんわからんで
母も十一人おったわけじゃが
もちろん卵子的にどれが母じゃったか
わからんかった
とにかくおらが生まれた時には
母のであろうが偽母のであろうが
姉であろうが手直にある乳房を宛がわれたわけで
どうやらそれが後年おらが街で平気でどの女の乳房にも
吸いつくようになった性向の由来であったと思っておる
こんな家族のなりたちなど
まったく他人にはよう話さんわけで
どう見ても昭和のにっぽんのどこぞのという感じではないが
たしかににっぽんのどこぞここぞあそこぞばかりに
おらのこの放浪大家族が定住しとったわけじゃなかったので
中国大陸に動いて行ったり朝鮮半島に流れて行ったり
インドからアフガンやイラクのほうにまで行ったりもして
けっきょくおらの家族はどこの国のものか
すっかりわからなくなっておった
おらの本当の父はどうやらインド人とベトナム人の混血で
おらの本当の母は朝鮮人か中国のどこぞの人と日本人の混血らしい が
これもおらの七人の祖母のうちのひとりオデンコビビから
どうにかこうにか聞きとった話だからかなり怪しいが
もしそうだとしたらなるほどおらのにっぽん遠離症にも
それなりのわけがありそうなものと合点もいきそうなもの
どこの国でもよく故郷がどうこうとか地元がどうこうとか
育ったところがどうこうとか
なにか愛着を持つのが普通のような押しつけが漂っていたりするが
おらにはそういうものが全くなくて
他の国と比べれば今のにっぽんはなにかと便利にできておる
それは確かじゃろうという程度の認めぐあいだけがあるんじゃが
そしてそれはそれでええんじゃないのかと思うのやが
それがまぁどうして郷土愛とか故郷云々とかになるんやろか
アっタマおかしいのとちゃうんかぁとおらは思うが
アっタマおかしい奴がノサバルのが人界の通例やから
人界に執着しないし一時的に滞在するだけでどうでもええやろと
思いがちなおらにはホントどうでもええんやがな
まぁこんなおらのとうに消滅しちまった家族の話をおらは
たったひとりでべらべらべらべら家んなかでしゃべくりどおしやけ ど
今日は祖父や祖母のことを思い出してしもうて
ちっと書いてしまったというわけやが
まぁおらも今年で161歳を迎えるんで
たまにははめをはずして
こんなことを書くのもよかろうかと思っての…
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