塩辛蜻蛉のしっぽの先
ずいぶん離れたあたりに
あ、老いた少年と
あ、生まれなかった老婆
せっかく
かぶって出たのに麦藁帽子の中が熱くて
脱いで
ぱたぱた
首元を煽いでいる
あ、蒼いブラウスの実在しない女の子
お湯で淹れる前に
緑茶は水で淹れるんですよと
宇治の老舗の茶屋のお婆さんに教わって
もう二十年にもなるかしら…
そうやって淹れている
この夏も
女の子も
わたしも
あ、実在しない女の子も
あ、若返った老婆と
あ、生まれなかった少年のおかげで
そろそろ
実在
あ、アヒルの水おもちゃで
ぷうぷう
あ、遊びたい盥の時間
終わったら
お昼寝ですからね
あ、遠いまぼろし
かならず
蘇って近づき直してくる
夏の桜並木の
鬱蒼とした葉々の
あ、熱のあたり
あ、わたしが夢だから夢は見ないのです
あ、わたし 見ない
あ、 から夢
あ、熱のあたり
鬱蒼とした葉々の
かならず
お昼寝ですからね
あ、実在
終わったら
あ、(…いかに、文を、作り、切ら、ない、の、が、大変か、
あ、(…いかに、日常文と、日常思惟を、逸れるか、
あ、(…いかに、世間問題を、
脱いで
お婆さん、
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