かつて祈りの場所だった此処、
今でも十二分にその趣は残っているものの、
此処を建造し、数世紀維持し続けた信仰はとうの昔に消え去り、
今となっては、
その教義を知るのも儘ならない…
祭壇だったらしい石組の傍ら、
小さな平たい石の上に腰を下すと、
遠方の山々が
よく見晴らせる。
時どき、
祭壇らしい石組に背を
凭せ掛けて、
なにか、月桂樹か、オリーブの枝葉でも、
手慰みに指先に遊ばせていると
ふさわしいような気もするが、
あいにく、それは近くには見つからず、
空無の枝葉を宙に泳がすように、
しきりに、指をひらめかせ、
山々のほうを、
見る、
よく見る、
というのでもなく、ただ視線を放ちやる程度に、
まるで、
長い輪廻のはざま、淀のところで、
ほんの短い休息を試みる、
天からの、山嶺からの、水のように、
あらゆるものを、たゞ、映す、
ように、
ように、
かつて祈りの場所だった此処、
祭壇だったらしい
石組の傍ら、
小さな平たい石の上に腰を下すと、
見晴らせる
遠方の
山々
時どき、
祭壇らしい石組に背を
凭せ掛けて、
水のように、
あらゆるものを、たゞ、映す、
ように、
ように、
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