2017年1月8日日曜日

惜しみながら 悔やみながら 寂しみながら 驚く



はじめて入ったその商業施設は楽しかった
都心にあり よく通る道路に立地しているのに
これまで一度も入ったことはない
あの建物の前で
あそこの一階で
などと待ち合わせにさえ使ったのに
一階エントランスより奥に入った例がなかった

買い物を終えても
他のブティックの並び具合が
よほどこちらの性にあっているのか
次々と店を覗いてまわる
多くは若者向けで
しかも女性向けの品揃えが殆どなのに
なにかを買う気もないまゝ
足を運び続けていって全く飽きない

すっかり知り尽くした街だと思っていたのに
こういうこともあるのだと
楽しく感心しながら
ふらふら
ふらふらする
この商業施設に来る若者たちは
さほど高級な装いはしていないものの
彼らなりに気に入った服装で来ているのがわかるから
こちらもだらけた格好で歩くわけにはいかない
そこから来る緊張感がまた適度に快い

今ふうの若者向けの商業施設など
ありきたりで空疎なところばかりと
シニカルな目でしか見ない傾向があったのに
居るだけで爽やかに
ちょっと元気になってくるような
こんな場所も
まさに都心も都心に存在したのか
と驚く

しかも
この商業施設は何十年も前からあって
同じように営業していたのだから
これまでの自分の何十年は何だったのかと
これにも
さらに驚く

この商業施設の体験が欠落した
何十年を生きてきて
それを自分の人生の貴重な何十年と思い込んできたなんて

去って行った友たち
逝った友たち
彼らと
この近くを歩きまわったり
必要とする品物を扱う店を探したり
ちょっと居心地のいいカフェや小さなレストランを探したり

この施設に一度も踏み居ることなしに
このまわりをさ迷うことで
過ごしてきた何十年かは
何だったのかと
惜しみながら
悔やみながら
寂しみながら
驚く




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