マルグリット・デュラスの『物質的生活』(1987)に
こう書いてあった
わたしは捨てた。そして、後悔した。
人生のどこかで、捨てるということをすると、いつも後悔する。
しかし、もし捨てないならば、
もし別れないならば、
もしその時間を保持し続けたいと望むならば、
整理整頓することに
人生を保存することに
人生を費やしていきかねないのだ。
人生を保存することに人生を費やしていく
警戒するべきは
このこと
これには共感する
だれもが
これをやってしまっている
ところで
デュラスでないわたし自身は
このところ
こう
思うように
なってきてもいた
捨てたり
別れたりすると
こちらの人生を使うことなしに
かえって
それらを
よく整理整頓し
保存することができるようだ
と
捨てたり
別れたりすることで
それらを
よりよく所有できるようだ
と
デュラスでないわたしは
後悔ということを
しない
いつからか
しなくなった
捨てもせず
別れもしないからかもしれない
捨てる
と言ってもいいような事態になり
別れるつもりもないのに
別れたような事態になって
離れていく
だけ
だからかもしれない
わたしの人生に絡まってきたもので
わたしがふかく所有し続けていないものは
ない
捨てず
別れなかった時には
かえって
所有していなかったのを
覚えている
離れていったもの
消えていったものは
ふかく
わたしのもの
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