パラケルススは一人になった。
ランプを消し、
使い古した肘掛け椅子に腰を下ろす前に、
わずかな灰を手のひらにのせて、
小さな声である言葉を唱えた。
薔薇は蘇った。
ボルヘス 『パラケルススの薔薇』
ボルヘスの最後の短編集『シェイクスピアの記憶』*の
内田兆史氏の解説によれば
ボルヘスは
「書いたものよりも読んだものを誇りたい」
「作者であるより読者でありたい」
と語っていた
また
「読み手の役割がもっとも重要なのだ。
読み手であって、書き手ではない」
「読み手が書き手の仕事を引き継ぐのだ」
と信じていた
あらゆる造形や工芸
美術や音楽や創作のたぐいにおいても
同様だろう
さらに
拡大解釈されてよい
世界創造や造物よりも
世界を受けとめて「読んだ」ことを誇りたいし
世界の受けとめ手こそが重要なのだ
と
鑑賞者や観察者
読み手や
読み解き手がなければ
神は悲しむだろう
世界を生きる者や読み解き手こそが
神を引き継ぐのである
*J.L.ボルヘス 『シェイクスピアの記憶』(内田兆史・鼓直訳、岩波文庫、202
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