2025年1月9日木曜日

真打ちはまだ登場していない


 

 

いま心にかかっている

もっとも大切なことから取り崩しにかかることを

たぶん

と呼ぶべきだろう

 

けれども

もっとも大切なことって

なかなか

言葉に引っかかってこない

 

まわりから禁じられているとか

世間的に言いづらいとか

そんなことではなくって

もっとも大切なこと探しをやろうとすると

箸の先からつるつる逃げていく

お汁のなかの麺みたいに

どうにもうまくつかめないし

そもそも見つからなかったりする

 

そういうわけだから

詩や詞を書こうとする人って

どうでもいいようなことを

ああだ

こうだと

書いてみるところから始まるのだろう

そうして

最後の最後まで

ああだ

こうだ

で済ましてしまうこともある

 

だから

たいていの詩や詞に頻出する

「愛」だの

「きみ」だの

「あなた」だの

「未来」だの

「あの時」だのは

どうでもいいようなことだ

 

ああだ

こうだ

のたぐいだ

 

そんな言葉が並んでいるうちは

真打ちは

まだ

登場していない






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