にこやかに
あまりといえばあまりに多額の国富を
差し出すことを
外交交渉の成功と呼ぶのなら
無邪気に笑いながら人身売買されていく赤ん坊こそ
最高の外交術を弄していることになり
最高の交渉人であることになるだろう
損して得取れ
とか
相手にも儲けさせてやれ
とか
商売上のそんな知恵もあるのは知っているが
こちらから出ていく金ばかり多くて
むこうからは全く入って来ないとなれば
ただの愚かなお大尽様か
大判振舞いしか能のないボンボンか
カツアゲされているか
しかない
むこうに差し出す金は
国民の税金の積み上げのはずだから
大企業の今後の利益にだけなるような使い方も
あまりに筋をはずれているだろう
大企業の工場も今後はむこうの国に作るとなれば
失われていくのは金だけではなく
技術や発想までも奪われていくことになり
そこまで吸い尽くされれば
後は核のゴミなどの国際処分場列島に
なっていくほかないだろう
むこうの国からは
何十兆円差し出されてくるのだろうか
経済はつねに今後の儲けの見通しを立てて
計画の立案をしていく世界なのだから
まさか出資を下まわる収入で
満足するのではあるまい
「たったひとりだけ賢明であるのを望むのは
大きな狂気である」*
とラ・ロシュフーコーは書いたが
巨大な根本的な狂気に
世の中が踊り続けているなかでは
えじゃないか
えじゃないか
えじゃないか
というぐあいに
「たったひとりだけ賢明であるのを望む」のを捨てて
踊りに加わるべきなのだろうか
*François de La Rochefoucauld
“C'est une grande folie que de vouloir être sage tout seul.”
Réflexions ou sentences et maximes morales, 1665