2016年8月8日月曜日

詩ておくかな



よっぽど不幸だったんだな
過去のじぶんを
ちら
ちら
断片的に思い出す時が
よくある

この人生以前の
遠く
幾重にも
層を成した過去の
じぶん

どしゃぶりの田舎道を
歩き続けている
鮮烈な記憶がある

雪原で
ひとりで
すっかり方途を失っている
これも
忘れようもない
記憶も

古く
巨大な城に
たったひとりで住み続け
暮れ方
明かりもなしに
廊下から
べつの廊下へ
辿っていく記憶も

幾層も堆積しているので
不幸の濃霧の
度合いが違う気がする
いまでも
意識が外にむかうのを反転させて
じぶんへと振り向けると
壮絶な寒気のなかに
全身が陥って行くのを感じる
じぶん自身が
寒い
寒い
真っ暗闇

今生も
生きてきた意識は同じ
けれど
陽にも当たった
暖かい風にも
吹かれた
少しはべつの層を
重ねられた

…でも
もう今生もやめよう
そろそろ
しにどき
ぐっどばい
言いやるべき人なんて
やっぱりひとりもいなかったけれど
ぐっどばい
もう飽きちゃった
この国この時代このじぶんこの体この環境この…

漢字で書くのを忘れたな

しにどき

詩にどき
にでも
しておくかな

詩ておくかな



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