この頃
幽霊を見ない
林
さん
森に行く
カナカナさえ
もう
啼かない
冷え冷えとしてきた
六郎潟
を見下ろせる
逗漉の森
に
しほしほ丸く
まあるく
歩を
進める
癖
そのまゝ
沢庵
切り分けてもいない
一本
丸ごと
まぁるごと
腰籠にさ入れて
持ってった
ども
北極星
見るまでは
見るまでは
なぁんか信じられね
信じられね
言うて
後は鹿狩りの
解禁の後のように
ずずずっと
山さぁ入って
と
見ると
新宿副都心
わけ分んねぇと
呟いてる間に
魔
が射す
刺す
差す
砂州
淀橋海岸
ニューマン突堤
茫々と
幽霊は立ち
幾人も立ち
船を待っているの?
みんなで
そんなふうに
立ったまゝ
江戸末期の写真のような
鮮明な線を
顎に
保ったりして
ひちゃっ
ざぶざぶざっぶっ
波じゃなくって
水母みたいな
ぬるぬるの手が
いっぱい
あたしの足を
掴んでいた
掴んでいた
引き摺り込むように
でも引き摺り込めないの
透けちゃってるから
足
あたし
とろとろに
なくなっちゃっているから
あるかのように
見えているだけだから
ぬるぬるの手たち
驚いて
怯んだけれど
同類
って思ったのかしら
また
いっぱい
触手のように伸びてきて
今度は
愛撫するように
掴む
んじゃなく
指を開いたまゝ
するする
ぬるぬる
する
の
あら、
愛
ね
突然の
って
あたし思ったら
じゅーっ
て
音が海じゅうにして
滅んでしまった
わ
みんな
なにもかも
海ばかりじゃなくって
海岸も
ニューマン突堤も
懐中時計
たった一個
宙に
残して
どんな意味かしら
問わないの
でも
もう
問わない
あるものはあれ
なくなるものはなくなれ
って
まるで光のない
曙の
ように
鉛筆はじめて
握った
幼な子の
ように
プラスチックで
これから
の
時代の
ため
作り直されて
ぴっかぴかなのよ
みんな
ぴっかぴか
ほんと
ぴっかぴか
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