人生など召使に任せておけ。
ヴィリエ・ド=リラダン
急逝の知らせを受けて
パリで葬儀
しかし用事が立て続けなものだから
夏のパリの暑さを
十分に肌に吸いもせず
三日でこちらに飛んで帰る
その間
面白い光景に出くわしても
小型デジカメで
お慰みに撮る程度で
スマホでは撮らず
東京は雷雨
執事のギュスターヴが
羽田に車で
助かったけれど
じつは
空港近くの愛人Pのマンションに
ちょっと寄ろうかと思っていた
口の堅いギュスターヴ
信頼のおける長年の供だが
Pのことは知らない
しばらく東京で
雑事の片付けをと思ったのも
つかのま
今度はモスクワの
旧友Kが
稀な銘酒を手に入れたから来いと五月蠅い
どんな銘酒だって
飲みに行っている暇はないんだとメールしながら
しかしもう
行く気になっている
…逃げたいんだな、雑時から
ルーティーンから
というわけで
モスクワで二日間
Kが呼んだ金髪のNと栗髪のRが
ひさしぶりに絶世のと言いたくなるほど奇麗だったけれど
いっしょにリオに行こうと誘われても
行かないよ
どうしても片付けないといけない雑事が
東京で
…いや、ギュスターヴに運ばせて
あの高原のユダヤ人Hの大別荘の一室を借りて
緑したたる広大な庭を見ながら
ちょっと作業を進ませ
それから
暑さ真っ盛りの京都のホテルの
涼しく静かなほの暗いスィートに移して
そこで済ませるつもり
で
またパリに向かい
留まらずに
すぐに地方の
wi-fiさえまったく通じない
森と湖のほとりで
朝から夜まで
草原の緑
森の緑
林の緑を
吸うようにたっぷり見続けるつもり
人生なんていうのは
ま、
その後のことさ
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