2018年8月12日日曜日

空室


一日のうちでも
湿り気はたえず変わりつづけ
それにぴったり寄り添っていけば
たゞ一体のからだを
貸与されているだけのような生きようも
それはそれで
りっぱな生ではないか

こころと思いとからだとが
なかなか一致してくれず
まったく不都合が絶えないと思う癖を
知らず知らず
つけてきてしまったのか
つけさせられてきて
しまったか

しかし
こころと思いとからだとが
いつもいっしょに
押しくらまんじゅうをしていた
ごくごく短い
ほんとうにめずらしい時間なのだったかと
ふり返る時も来るだろう
きっと

からだが去ってしまう時
押しくらまんじゅうにうってつけの
得がたい仲間を失くしたのだと
ようやくわかるのか
ふたり
とり残されてみて
こころと
思いは

さらには
かれら
こころも思いも
それに
時間というものまでも
やがて
去っていってしまう

もうだれだかわからない
だれともいえない
だれでもない
空室
とでも呼ぶほかない
あかるさと
ひろがりだけが
そのあとは
ずっとあり続けるのか……



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