2022年7月30日土曜日

タンス形

 

 

朝から

入道雲になりかけの夏の雲が

ゆたかに

空のあちこちに湧いている

 

それらを

見はらせる机から

いま

キーボードを打ちながら

文字を

記していっている

 

あれらの雲のなかに

また

あれらの雲とわたしの目のあいだに

全人生はあり

全人類史はある

 

おそらくは

全未来も

 

きょうも架空の海に入り

しばらく

潜水などしながら

浮かんできては

波に揺られ

真上の青空を眺めたりしよう

 

浜に戻ったら

あまりうまくはないが

ココナツの汁を

ちょっと多めに飲もう

 

そうして

昔ふうにペンで

厚手の紙にかりかり音を立てて

言葉も

しっかり選びながら

手紙を書き

パソコンの画面にむかって

日ごろの労を報いてやるために

ていねいに送り届けてやろう

腕と手と指に

郵便配達夫としての仕事を

特別に依頼して

 

そう

きょうは静谷ゆりえの死んだ日

 

そう

きのうは谷百合しずえの誕生日

 

そう

あしたはユニ・エリズシニタの出生予定日

 

暑い真昼も

ぼくは

モヒートなど飲まずに

二十種類ほどブレンドした熱い茶を飲もう

そうして

夢を見るのだ

ぼく

などとは自称せず

IとかIOとか

おいらとか

あたいとか

吾輩とか

一文ごとに一人称単数形を変える

夢を

 

単数形も超えて

タンス形で

しゃべったりさえする

夢を







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