ルソーは
最初の有名な論考*で
学問や文芸、芸能の復興は
社会の風俗習慣を
純化することに貢献したか?
それとも
頽廃させることに寄与したか?
検討しなければならないのは
まさに
これである
と問題提起した
学生時代
世界の名著は
とにかく
一冊でも多く読もう
熟読しよう
と意気盛んに読書に打ち込んでいた時には
ルソーの時代の論文の常道の
あの演説調の語り口への違和感も相まって
ルソーのこの問題提起は
ピンと来なかった
純化か頽廃化か
そういう分け方にもピンと来なかったが
学問や文芸、芸能の復興が
社会全般を豊かにし
活性化したのは当たり前のことで
だいたい
ルソーの著作を翻訳で読めていること自体
そのおかげではないか
と思った
ところが
学問や文芸や芸能が発展し切った末に
盛大に頽廃し堕落したのを目の当たりにしてみると
ルソーのこの問題提起は
まったく新しい今日的問題提起として
蘇ってくる気がする
彼の問題提起のしかたは
いつも
微妙にアングルが間違っている感じで
ミルの代議制論や自由論などよりも後の時代に生まれた者には
どうもピンと来ない気分がつきまとうのだが
けっこう東洋的に
まことなる生き方とか
純なる心で生きうる社会をどう作るか?
などという視点から見ると
意外と
ピンピンピンと来たりするところがある
東洋的ルソー学
というのが
もっと行なわれても
いいと思える所以なのである
ね?
中江兆民先生?
*『学問芸術論』
**《Le rétablissement des sciences et des arts a-t-il contribué à épurer ou à corrompre les mœurs? Voilà ce qu'il s'agit d'examiner. Quel parti dois-je prendre dans cette question?》
Jean-Jacques Rousseau : Discours sur les Sciences et les Arts (1750)
0 件のコメント:
コメントを投稿