大人ではない
高校生だというが
まだ
中学生のような
からだつきではないか
カズヒロの頬から首のあたりに
なぜか
ふいにこころは衝かれて
いづみは驚いた
二十も歳上の夫がいて
息子も
もう
小学三年生である
激しい恋愛の末の結婚で
五十後半とはいえ
夫はまだ若々しいし
不満もない
学校のサッカーチームで
息子たちのコーチに駆り出されて
家の近い息子と
いっしょに帰ってきて
寄ってくれたカズヒロだった
スポーツマンなのに
すこし青い印象がある
細い顔で
目が切れ長だった
この子は
たぶん
長生きしない
そう思いながら
頬から首のあたりを見た時
カズヒロは
すでに
いづみの心の奥にいた
カズヒロが帰った後
庭で引き抜いたミズヒキを
三本
寝室の花挿しに飾った
遅く帰ってきた
夫の高宏は
いいね
ミズヒキか
と言って
しばらく眺めていた
高校生の頃
ミズヒキの好きな二十代の女に
はじめて
手ほどきをしてもらったのを
高宏は思い出した
その後の人生でも
出会ったことのないような
美しい顔の女だった
ミズヒキ
いいね
と
高宏は
いづみの脇に身を横たえて
また
言った
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