等閑世事任沉浮。
大正六年
永井荷風は書幅を掛け替える
そのうちの王一亭のものに
この文言が見える
あゝ
こんな気分だな
と
遠い世の
荷風先生の思いにも
王一亭の思いにも
共鳴
ひさしぶりに
断腸亭日乗を繙く気になって
巻之一を開けてみると
これに出会った
九月十六日、秋雨連日さながら梅雨の如し。
とあり
雨のさまを簡潔に伝える
なんでもかでも
ぐたぐた長く長く書き垂れ流すムラカミハルキふうに汚染された
ニッポンの文章界には
これはいい薬
九月十九日。秋風庭樹を騒がすこと頻なり。
たまたま
今
そのあたりを地元としているので
昔のこととはいえ
荷風先生の散歩道の
右左
あちらこちら
ちょっと
想像がつきやすい
靖国神社の前をちょっと行けば
かつて
硯友社のあったところ
尾崎紅葉には
荷風先生は会ってはいないと思うが
泉鏡花には
会っていたのかしらん?
ともあれ
荷風先生三十九歳にして
堂々たる隠居ぶり
むろん
下のほうは御壮健であられたようだが
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