2023年7月13日木曜日

外に出て行くな かたく身を閉ざせ

 

  

 

創造されたものはすべて無である。

マイスター・エックハルト

 

すべての被造物はひとつの純然たる無である。

マイスター・エックハルト

 

 

 

 

マタイによる福音書の

「心の清い人々は幸いである、その人たちは神を見る」(マタイ5)

に触れた後

マイスター・エックハルトは

心の純粋さとはなんであろうか

と問うている

 

この時の答えが

出色のものとなっている

 

すべての身体的事物から離れ

自分自身の内に集中し

かたく身を閉ざせ

その後

神の内へと自らを投げ入れ

そこで

神とひとつになるのだ

これが

心の純粋さである

 

彼はここで

ダヴィデの考えをふり返りつつ

さらに

言う

 

ダヴィデは

そこから走り出て

魂の光の内で成就されるわざこそ純粋であり
無垢である

と語る

しかし精神の内部にとどまり

けっして外へ出ていくことのないわざの方が

はるかに無垢なものである

 

 

彼のこの説教からは

外に出て行くな

かたく身を閉ざせ

という忠言をしっかり受けとめておこう

というのも

人界にあっては

「外」に出て行くのはしばしば知や智の契機とされるからであり

身を開くことこそが

智慧や認識への階梯であると言われるからである

 

しかし

マイスター・エックハルトは

外に出て行くな

かたく身を閉ざせ

と言う

 

これはもちろん

物理的なことを言っているのではない

思いにおける態度である

 

彼が言い足りなかったことを加えれば

この人界や地上界に生まれて

ある程度の見聞や経験を積んだ後は

人界や地上界のすべてを放棄するのがよい

人界も地上界も

思いの中での

力の深化

先鋭化

凝縮

結晶化

浸透力

などの獲得のための比喩の素材箱でしかないからである

 

人界や地上界への

ゆえなき価値づけを捨てなければならない

それらはだんだんと失われても

一瞬に失われてもいいものであり

その存続に不要の心配をする必要はない

しかもすべては神の計画の内にしかなく

たった数ミリのわずかな誤差も存在しえない

どうして被造物の人間ごときが

地上界の存在のありようについて

心配などしていいわけがあろう

 

思いの中において

人界の一切を捨てよ

地上界を捨てよ

ということを

いよいよ強く意識の正面に置くべきである

 

 


 

 

*『エックハルト説教集』(田島照久編訳、岩波文庫)を用いているが、訳を変更している部分がある。

 

 






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