子どもの頃
御前崎のある民宿が
なぜか定宿のようになって
夏になると泊まりにいき
さよりちゃんという
そこの宿の同い年の女の子と
数年間
夏だけのことではあるが
ともに
成長を確かめあった
さよりといえば
サヨリという魚があって
御前崎でもよく獲れるので
サヨリの名前を
さよりちゃんはつけられたのかな
と思っていた
そんなことを思いながら
森進一の歌った『港町ブルース』を
聴いている
三番目の歌詞は
出船 入船 別れ船
あなた乗せない 帰り船
うしろ姿も 他人のそら似
港、三崎 焼津に 御前崎
とあって
御前崎が出てくるのだ
何度聴いても
驚かされるような名歌詞で
数百年後の日本に
閑吟集のような俗謡集に収録されて
しっかりと残っていくだろうな
と確信される
背のびして見る 海峡を
今日も汽笛が 遠ざかる
あなたにあげた 夜をかえして
にしても
流す涙で 割る酒は
だました男の 味がする
あなたの影を ひきずりながら
にしても
明日はいらない 今夜が欲しい
にしても
海に涙の ああ 愚痴ばかり
にしても
ちょっとやそっとでは
書けないような
決定的な歌詞となっている
詩というのは
こういうものを言うので
学生っぽや
インテリ崩れが
わざとわけのわからないような言葉遊びをしたものでは
まるでダメなのだ
にっぽんの詩は
とことん感傷的でなければならない
その感傷も
万人受けする
にっぽんの山河そのままの感傷でなければならない
だから何度も万葉集に戻るのであり
北原白秋や若山牧水に再三戻ることになるのだ
『港町ブルース』の歌詞は
雑誌『平凡』が公募し
最優秀賞を受けた歌詞に
なかにし礼が補作したものだという
作曲面では
いわゆる“ピョンコ節"と呼ばれるもので
1拍を8分音符2つでなく
付点8分音符+16分音符の組み合わせにしている
七五調の歌詞と相性がよく
明治時代から
童謡や唱歌によく使用された
スイング感が増し
リズミックになるが
この歌の場合は演歌の歌い方をしているので
スイング感は抑えられている
https://www.youtube.com/watch?
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