大事と思っているものが
ほんとうは
いちばんいらない
―と、始めたものの
ここで終えます
大事と思っているもの
についての話
いまは
(もう
(テーマ変更しちゃうんだ、
(今回は
人生の最期の頃
なにがほんとうに必要か
そんな話に
移りたいんだナ
死んでいく人たちを見てきたが
たとえば
磨きやすい歯ブラシ
ヘッドが小さくて
口の中で小回りが利くやつ
でも
小さ過ぎると
いつまで経っても
磨けない気になるので
適当な大きさのやつ
それに
手ぬぐいやタオル
タオルのやわらかみは
死期のせまった者にはうれしいが
手ぬぐいに劣る吸水性が
意外と疲れる
生の遠ざかりを早める気になる
ああ
それにティッシュペーパーも
これはふんだんに要る
いろいろ零すし
涙やヤニで目は汚れる
体温計も拭く
あまり使わなくても
あるだけで
どこか安心させられる
ほんとうに最期になると
それらも
もうなにもいらない
ガーゼや
脱脂綿や
滅菌タオルで
看護師たちがやってくれる
もう
自分では腕も上がらない
歩けもしない
トイレに行くことからも
もう解放される
ひとりでトイレに行って
用足しをし
おしりを拭けるようになってからの
長いながい期間の
終わり
ごたいそうに
終焉と呼んでみたくも
なるんじゃないかな
シャツや
下ばきの替え
パジャマや
寝巻きの浴衣の替えも
いるだろう
看護師が見るといっても
失禁での汚れは
避けられない
ちょっとの汚れといっても
替えがあるなら
着替えさせたいし
息を引きとったからといって
すぐ死に装束
というわけではない
病院を出る時の装いは
こざっぱりした
清潔な浴衣や
Tシャツぐらいでいい
だから
それらも必要
むしろ
そこがいちばん
本人も
まわりの人たちも
思いつかないところ
あわてて買いに出た
百円ショップの
ウサギだか
ネコだか
ゆがんだ顔のキャラが
少し薬品臭く
プリントされたTシャツ
そんなのを着せられた御遺体が
有馬温泉や
箱根観光協会の
手ぬぐいで
涙を拭きふきしている
遺族や友人に
ともなわれていったりもする
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