2013年3月26日火曜日

がんばろうという気持ちがふいになくなって




がんばろうという気持ちがふいになくなって
老衰しているわけでもないのに
しばらくわたしを眠ってしまっていた

日はのぼり
日は沈み
空はプラネタリウムのスクリーン
ティーバッグのお茶を淹れに台所に来ると
冷蔵庫は猫のようにグルグル
できたお茶が熱く静まって
まわりの空気が綿入れのようにやさしい

長いながい
心のほの暗い廊下を行き来して
歩みながらお茶を飲もうかと立ち上がると
ときおり現われる
齢百二十歳はあろうかと見える老人がわきに立ち
言うことには

おまえはまだ生まれてさえいないからな…

体は台所の小さな空間にあるのに
このことばに心は廊下を離れ
遠い砂漠とそのむこうの海を経巡っていた
行けども行けども
砂漠


おおい、わたし
まだ眠っているのかい
遠いとおい砂漠から
おまえにわたしは便りする

返しの便り
おまえからは
いつ
来るだろう
まったくのんびりしたおまえ
まだ生まれてさえ
いないからな

言いかける…



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